板ガラス製造ラインの省エネ化でGHG排出量削減に貢献!

AGC株式会社横浜テクニカルセンター(鶴見区)

(調査協力者)カーボンフリーコンサルティング株式会社(中区)

1 事業概要

二国間クレジット制度(JCM)を活用したインドネシアにおける板ガラスの省エネ溶解炉の導入

2 国・地域(都市等)

インドネシア(シドアルジョ)

3 SDGsへの貢献

4 事業化の道のりと実績

自社製造ラインの省エネ化によって、インドネシアにおけるGHG排出量の削減に寄与

2021年、インドネシアは、遅くとも2060年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成目標を発表しました。世界的には2050年までの達成が目指されていますが、インドネシアにとっては、従来の達成目標である2070年から10年前倒しとなる意欲的な目標です。しかしながら、今後も人口増加、都市開発、エネルギー需要の増加が見込まれるインドネシアの長期目標の達成には、国際支援が不可欠な状況となっています。

AGCグループは、2050年までのカーボンニュートラルに向けて、2030年までにGHG排出量30%削減、GHG排出量売上高原単位50%削減という中間目標を設定しています。この中で、板ガラス製造における溶解工程でのGHG排出量は、グループ全体の総排出量の中でも高い割合を占め、優先して取り組む課題の一つと位置付けられています。

AGCグループは、2024年3月現在、建築用や自動車用ガラス製造ラインをインドネシアに4基所有しています。板ガラス製造工程では、主に原料(砂・ソーダ灰・苦灰石等)の溶解工程において多大な化石燃料を消費することから、製造ラインの省エネ化は同社のGHG削減目標に合致するとともに、インドネシアの目標達成にも寄与することになります。

そこで、インドネシアの製造ラインの省エネに向けて、2022年度に実現可能性調査を実施し、2023年度に環境省の二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業のうち設備補助事業に採択され、省エネガラス溶融炉が導入されることとなりました。

【プロジェクトサイト】
ジュアンダ国際空港より西に約24km
地図データ ©OpenStreetMap contributions. Tiles courtesy of Andy Allan.

横浜市・市内企業との連携で実現可能性調査を実施

AGCと横浜のゆかりは100年以上前にさかのぼります。AGCは、1916年にAGC横浜テクニカルセンター(旧京浜工場)を、京浜臨海工業地帯の中核地、横浜・鶴見に開設しました。2021年には、横浜市の企業立地促進条例による支援を活用し、市内に分散していた各種開発機能を集約したことで、横浜テクニカルセンターはAGCの技術開発の中心拠点となりました。また、同センターでは、建材用板ガラス、車載ディスプレイ用カバーガラスの製造も行っており、研究段階から生産・出荷までが揃ったユニークな拠点として、今回の実現可能性調査やJCM設備補助申請に際しても中心的な役割を果たしています。

AGC株式会社横浜テクニカルセンター

AGCはこれまで、横浜市が開催するY-PORTワークショップやフィリピンセブ、ベトナムダナン及びインドネシアバタムでのビジネスマッチングセミナーに参加してきました。このようなネットワーキングの機会を経て、インドネシアの製造ラインの省エネに向けた実現可能性調査を横浜市や市内企業との連携で実施することとなりました。

AGCの本事業の責任者はこの経緯を、「これまでY-PORTのイベントへの参加などを通して、横浜市がインドネシアで様々な活動をしていたことを知っていました。また、GHG削減効果を第三者から客観的に評価してもらうことも重要であり、連携パートナーを探していたところ、Y-PORTセンターのネットワークを通じて、YUSA会員企業のカーボンフリーコンサルティング株式会社とつながることが出来ました。」と振り返ります。

実現可能性調査では、経済産業省の補助事業を活用し、①詳細な事業化計画への落とし込みと経済性評価、②インドネシアJCM事務局との事前協議、③GHG削減効果の明確化を主な調査項目としました。特に、③は横浜市内企業のカーボンフリーコンサルティング株式会社が担当しました。

打合せの様子

グローバル・サプライチェーンと進出国でのGHG排出量削減を期待

本事業は、インドネシアにおいて、更新時期を迎えているAGCグループ会社の板ガラス溶解炉の冷修(改修)に合わせ、①燃焼方式の変更と、②炉の構造の変更によって、エネルギー効率を向上させるもので、従来と比較し、約5,700 tCO2/年のGHG削減が想定されています。板ガラス溶解炉の寿命は10~15年程度であり、今後も、AGCグループが展開する、アジア(インドネシアやタイ)の他の製造ラインの冷修(改修)に合わせた省エネ化や新技術の導入が検討されています。

GECのWEBサイト(https://gec.jp/jcm/jp/projects/23pro_idn_02/ )からの引用

AGCグループは、現在(2024年3月時点)、日本に4基、アジアに7基(インドネシアの4基を含む)の建築用/自動車用ガラス製造ラインを有しています。今後も、これら製造工程での省エネ化や脱炭素化を推進することで、同社のグローバル・サプライチェーン及び進出国におけるGHG排出量の削減が期待されます。

5 本事業で活用した公的支援制度等

支援制度等事業名実施者調査報告書等
令和4年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業JCM実現可能性調査(脱炭素分野)板ガラス製造溶融炉における燃焼方式及び炉形状変更によるGHG排出量削減に関する実現可能性調査提案者:AGC株式会社 調査協力者:カーボンフリーコンサルティング株式会社000176.pdf (meti.go.jp)
環境省令和5年度JCM設備補助事業板ガラス製造溶融炉における燃焼方式及び炉形状の改善代表事業者:AGC株式会社 共同事業者:PT ASAHIMAS FLAT GLASS Tbkプロジェクト概要