限りある水を有効に~熟練した聴音技術とセンサーの組み合わせで効率的に漏水を探知!!
水道テクニカルサービス株式会社(横浜市旭区)
1 事業概要
漏水探査技術の普及(上水事業の無収水対策)
2 国・地域(都市等)
インド(ベンガルール市)、ベトナム(フエ省、ホーチミン市他)
3 SDGsへの貢献
4 事業化の道のりと実績
(1)現地課題と進出経緯
水道テクニカルサービス株式会社(以下、STS)は、上水道施設の漏水調査専門会社です。国内では、神奈川県下をはじめ関東圏の水道事業体が発注する漏水調査の受託業務を主体としています。
近年、STSの保有する漏水調査技術に、水道インフラが未成熟な新興国から高い関心が寄せられています。そこで、漏水調査業務の実施による漏水の早期発見や現地技術者に対する漏水調査技術トレーニングによる技術移転により、新興国の水課題解決と人材育成にまで事業領域を拡大しています。
(2)インドへの展開
STSは、平成24年度に横浜水ビジネス協議会との連携により行われた外務省調査(外務省中小企業展開支援事業(インド、南アフリカ、ベトナム、マレーシアの4カ国の上下水道分野のニーズ調査)のビジネスマッチングセミナーに参加しました。このセミナーへの参加が契機となり、インドにおけるビジネス展開が始まりました。STSの漏水探知技術は、ニーズ調査各国から引き合いがありましたが、その中でもインド国ベンガルール市上下水道局(以下、BWSSB)のニーズは強く、そして、同時期に実施されていた円借款事業とも合致していることが確認され、平成25年より28年において、JICA中小企業海外展開支援事業(案件調査および普及・実証事業)にそれぞれ提案・採択され現地調査等を実施するに至りました。
同社は、4年間に亘る現地調査等を通じて、水道管網に自動漏水音検知器を3,000器設置するとともに漏水調査技術に係るマニュアル整備を行いました。また、漏水探査やBWSSBの課題である漏水率低減の重要性を根気よく指導することで、企業としての信頼は勿論のこと技術的な信頼も得ることができました。そして、BWSSBは漏水防止の重要性を鑑み、平成29年初めには漏水対策部門を発足し、本格的な漏水防止計画がスタートすることになりました。
JICA事業終了後の平成29年度には、BWSSB技術職員に対する漏水調査トレーニング業務をBWSSBから受注しました。このトレーニング業務は、海外の行政機関と中小企業が直接契約した事業として日本の援助機関等から注目を集めました。
現在、同社は、現地民間企業との提携(MOU締結)による共同営業や、横浜市経済局IDEC、JETRO等の支援を受けながらインド各地への展開を進めています。
(3)ベトナムへの展開
STSは、平成26年に横浜市水道局によるJICA草の根技術協力事業「横浜の民間技術によるベトナム国『安全な水』供給プロジェクト」に参加し、ベトナムにおける事業展開の足掛かりをつくりました。 同草の根技術協力事業に参加した成果として、平成28年にSTSはベトナム国フエ省水道公社(HueWACO)と、HueWACOへの漏水調査技術向上に対する技術協力や、ベトナム国水道事業体への共同展開に関する覚書を交わしました。
HueWACOとの協業により、同社機器を用いた漏水監視システム導入をベトナムの水道事業体に提案しています。また、インド同様に漏水調査技術の未熟若しくは保有しない水道事業体に、漏水調査技術トレーニング(有償)の提案を行っています。この結果、平成29年にニンビン省水道局発注の漏水調査技術トレーニング業務を受託しました。
平成30年度には、ホーチミン市に所在するBavitec社と業務提携を交わしました。ロンアン省にて共同デモを実施し、翌年にはロンアン省、カインホア省ニアチャン市、ホーチミン市トゥドゥック区に漏水監視機器の納入実績をあげました。
フエ省水道公社と覚書を締結 ベトナムでの技術研修の様子
(4)経営のダイバーシティ化の推進
STSは、海外関係者との円滑なコミュニケーションを図るため、これまでにJICA青年海外協力隊経験者を2名採用しています。海外経験を有する社員の採用によって、同社の技術者の知見や経験を英語で丁寧に伝えることが出来るようになりました。
また、経済産業省国際化促進インターンシップ事業を活用し、令和元年にインドネシアから研修生を受け入れました。研修生は令和2年に採用される予定です。STSは経営のダイバーシティ推進を図り、海外展開を進めています。
コートジボワール首相がTICAD VIIでの同社の展示ブースを訪問 インドネシアからのインターンシップ研修生
5 本事業で活用した公的支援制度等
支援制度等 | 事業名 | 実施者 | 調査報告書等 |
---|---|---|---|
平成25年度政府開発援助海外経済協力事業 (本邦技術活用等途上国支援推進事業)委託費 「案件化調査 | 上水道漏水検知サービスの案件化調査 | 水道テクニカルサービス株式会社 エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社 共同企業体 | 報告書 |
平成28年度JICA中小企業海外展開支援事業(普及・実証事業) | インド国 自動漏水音検知器を用いた漏水検知システムの普及・実証事業 | 水道テクニカルサービス株式会社 | 報告書 |
JETRO「新輸出大国コンソーシアム」 | 専門家による海外展開支援 パートナーによるハンズオン支援 | 水道テクニカルサービス株式会社 | 事業概要 |
平成30年度IDEC 海外進出支援事業事業化可能性調査助成金 | インド ハイデラバード市上下水道局F/S調査 | 水道テクニカルサービス株式会社 | – |
平成25年JICA草の根技術協力事業(地域活性化特別枠) | 「横浜の民間技術によるベトナム国「安全な水」供給プロジェクト」 | 横浜市水道局 | 事業評価表 |
経産省国際化促進インターンシップ事業 | 経産省国際化促進インターンシップ事業 | 水道テクニカルサービス株式会社 | 事業紹介 |