
概要
製薬会社が開始した使用済の「おくすりシート」を自主回収しリサイクルする生活者参加型の日本初の取組。横浜市は、法律上の整理、回収拠点選定や市民への広報に協力している。実証実験で実行性が見込めたことから本格展開している。
実施期間
2022年10月~
実施機関・ステークホルダー
横浜市資源循環局、第一三共ヘルスケア株式社、TerraCycle Japan合同会社、その他回収拠点として、病院・調剤薬局・横浜市薬剤師会・横浜市地域ケアプラザなど
背景・目的
海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まっている。このため、多様な製品に使用されているプラスチックに関し資源循環体制を強化するため、日本では2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行された。
この法律では、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進することが求められている。
この法律の施行を受け、事業者はプラスチック素材から紙や木などへの素材転換やプラスチック原料の減量化など、様々な工夫を凝らしている。しかし、衛生面などから素材転換・減量化ができない製品もあり、これらは自主回収し再資源化することでの資源循環を目指している。
そこで、製薬会社が人の健康と不可分な自然環境を守ることを目的に、医薬品の包材という特性から発生抑制には限界がある「おくすりシート」を自主回収・リサイクルする取組に着手することとしたため、横浜市はその実現に期待を寄せた。
また、横浜市では、法律の施行を受け、2024年10月から一部の地域でプラスチックごみの分別・リサイクルの拡大(分別ルールの変更)しており、市民の分別・リサイクルに対するさらなる気運の醸成を求めている。この取組が浸透することで、他の事業者・品目の自主回収・リサイクルの取組に広く展開することを望むとともに、市民がこれに参加し、様々な素材の資源循環の発展に寄与することを期待している。
実施内容
・2022年10月~2023年9月 実証実験
※ 30箇所で開始、回収量が目標を大幅に上回ったため60箇所に拡充、1,077kgを回収
・2023年10月~本格展開(102箇所)
※ 本格展開後から2024年8月末までに約5,000kgを回収
成果・影響
小さな「おくすりシート」も大切な資源であるということが市民に認知されるとともに、行政が回収する集積場所ではなく、回収拠点に持参するという大きな行動変容につながった。また、病院や地域の調剤薬局では、処方した薬の残薬がないことを確認することができるため、服薬指導にもつながるという副次的な効果も見られた。
この事例は、廃棄物行政における市民の行動変容の促進や循環型社会の実現に向けた他の取組への展開もできる、とても大きな可能性を持つ取組である。